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認知症/もの忘れ

症状

年をとってくると誰でももの忘れはするものですが、人より多い、日常生活に支障が出る、などの場合は受診をお勧めします。認知症とは、脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が低下し、社会生活に支障をきたすようになった状態のことで、原因として有名なのはアルツハイマー病です。認知症になる病気はそのほかにもたくさんありますが、神経学的診察などで原因を見つけて、治療をすることが大切で、特に「治療可能な他の病気」を見逃さないことが重要です。

診断・検査

神経学的診察、高次機能検査に加え、他の疾患との鑑別(区別)のために、血液検査、頭部MRI/CTなどを行います。髄液検査なども必要な場合があります。近隣の医療機関(虎の門病院、東京慈恵会医科大学、日赤医療センター、東京都済生会中央病院、国際医療福祉大三田病院など)と連携して進めます。

治療

  1. アルツハイマー病、レビー小体型認知症などの変性疾患
  2. 脳血管障害(脳血管性認知症):これらは日常生活を改善させるような生活指導や、飲み薬による治療などが、患者さんごとに違うので、詳細な診察とケアが必要です。
  3. 甲状腺機能低下症やビタミン欠乏症などの代謝性疾患:
    ホルモン剤やビタミンなどの補充で改善することがあります。
  4. 正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など外科的治療が有効なものなど:
    これらは代表的な「治る」認知症です。パーキンソン病やアルツハイマー病とよく間違われて治療されていることがありますが、外科的治療によって改善することが多くあります。
アルツハイマー病について

1907年にAlois Alzheimerが病理報告をした際に、斑状の構造物(老人斑)と神経細胞内の紐状の構造(神経原線維変化)をアルツハイマー病の特徴的病理所見として記載しました。老人斑は、細胞外へのアミロイドの蓄積が主であり、1980年代になってアミロイドβ蛋白質(Aβ)として同定されました。神経原線維変化は、paired helical filament (PHF)からなるもので、井原らによりタウ蛋白質であると同定されています。これら二つの脳病変のどちらがアルツハイマー病発症に本質的な影響を与えているのかについては、様々な議論があったのですが、Mannらによるダウン症候群の経時的な検討により、アミロイドβ蛋白質がアルツハイマー病のより上流の変化であると考えられています。
アルツハイマー病は、ゆっくりと年単位で症状が進行していきますが、認知機能低下の症状が現れる何十年も前から、脳の中では変化が起こっていると考えられています。残念ながら現在、アルツハイマー病の根本的な治療はなく、症状をやわらげる薬剤としてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(国内3種類)とNMDA受容体阻害薬が使用されています。よく似た作用機序なのですが、患者さん毎に使い方にやや“コツ”が必要ですので、それぞれ最適な治療を選んでいきます。今すぐには使えませんが、根本的な治療を目指して、抗アミロイドベータ免疫療法や抗タウ免疫療法などが開発中です。

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